米国シンクタンクのピュー?リサーチ?センターは1月11日、ジョー?バイデン政権の移民政策についてまとめたレポートを公開した。本レポートは、移民の受け入れを拡大するバイデン大統領の方針を明らかにしている。
バイデン大統領は就任初日の2021年1月20日、不法移民が8年で市民権を取得できるようにするための移民法案の草案を議会に送付し、各種移民プログラムの変更に着手し始めた。2月24日には、ドナルド?トランプ前大統領が2020年4月23日から発動していた移民ビザ取得希望者への入国停止命令を解除すると大統領布告で発表した(2021年2月26日記事参照)。
国土安全保障省によると、永住権取得者に関し、近年、全体の約3分の2が米国籍者または永住権取得者の家族であることを理由に取得が認められているが、現行法では特定の国の出身者が年間取得者全体の7%を超えることは認められていない。そこでバイデン大統領は、移民法案を通じ、当該上限を引き上げ、数年間申請待ちの人々のために処理を早めることを提案している。
トランプ前大統領が厳しく制限してきた、難民の受け入れ人数も拡大される見込みだ。バイデン大統領は2021年10月8日、2022年度の難民受け入れ制限を現在の6万2,500人から12万5,000人に倍増することを決定した。発行数が毎年14万件に制限されている雇用に基づく永住権については、移民法案が成立すれば、前年度の発給制限の余剰が繰り越され、配偶者および子供は発給制限を受けることなく永住権を取得できるようになるとしている。
移民多様化ビザ抽選プログラムは年間5万件から8万件に増加し、トランプ前政権下で却下率が増加したH-1B就労ビザ(特殊技能職、注1)の方針の見直しや同ビザを保持する人々の配偶者に対する就労許可も提案されている。
バイデン大統領は就任初日に、幼少期に親に連れられて米国に不法入国した若者(ドリーマー)の強制送還を猶予する措置(DACA)を維持するための覚書に署名し(注2)、母国の政情不安や自然災害を理由に米国滞在を認め労働許可を与える一時的保護資格(TPS)の対象拡大や期間延長を実施するなど、特別な理由で米国に居住する多くの非永住者にも寛容な措置を講じてきている。
(注1)国務省によると、H-1Bは2019年に発行された就労ビザの22%を占めた。その他の内訳は、H-2Aビザ(季節農業労働者)が24%、H-4ビザ(同行家族)が15%、H-2Bビザ(熟練?非熟練労働者)が12%、それ以外が27%となっている。
(注2)DACAをめぐっては、連邦最高裁判所が2020年6月18日、DACAを廃止するとしたトランプ前大統領の決定を認めない判断を下した。他方、テキサス州連邦地方裁判所は2021年7月16日、2012年に議会の承認手続きを経ずにバラク?オバマ大統領(当時)の大統領令で導入された同措置は違法と判断するなど(バイデン大統領は控訴の意向)、係争が続いている。
(片岡一生)